有機栽培のトマトやピーマンや葉野菜etc…。うるマルシェの直売所に並ぶ野菜のなかでも安心・安全なだけでなく、その味わいに定評がある「識名農園」の野菜。農園を営む識名共史(しきなともふみ)さんは、沖縄県内では数少ない有機農産物(JAS)認定の野菜づくりにこだわる生産者です。
有機栽培のトマトやピーマンや葉野菜etc…。うるマルシェの直売所に並ぶ野菜のなかでも安心・安全なだけでなく、その味わいに定評がある「識名農園」の野菜。農園を営む識名共史(しきなともふみ)さんは、沖縄県内では数少ない有機農産物(JAS)認定の野菜づくりにこだわる生産者です。
今回お邪魔したのはうるま市勝連南風原、うるまブルーの青い海が目と鼻の先に広がる4000坪の畑で有機野菜を栽培している「識名農園」です。農園主の識名共史(しきなともふみ)さんは代々農業を営む家系に育ち、共史さんも就農して約13年になるそうです。
1000坪ほどの畑でゴーヤーを栽培しているほか、オクラ、ヘチマ、枝豆、島唐辛子、パパイヤなど、沖縄らしさ溢れる野菜をいくつも作っています。
識名さんの曾祖父は首里城近く、琉球王府の御膝元であった那覇市識名出身。祖父の代にうるま市にある世界遺産・勝連城跡(かつれんじょうあと=写真)近くに畑地を拓き、さらにその後、現在の場所に移転したそうです。
驚くことに識名さんは、読谷村にある世界遺産・座喜味城跡(ざきみじょうあと)を築城し、のちに中城城(なかぐすくじょう)主となった護佐丸(ごさまる)の子孫にあたる人。琉球王国 第一王朝建国の功臣として知られる護佐丸ですが、晩年には第10代勝連城主 阿麻和利(あまわり)に攻め入られ自刃したと伝えられています。
ちなみに、この「護佐丸・阿麻和利の乱」の歴史的解釈については諸説あり、琉球史最大の謎として今も多くの歴史好きの興味を引いてやみません。
と、少し脱線してしまいましたが、話を識名共史さんに戻しましょう。
みなさんは「有機JAS」という言葉をご存じでしょうか? 農薬や化学肥料などの化学物質に頼らず、自然界の力で生産された環境保全型の食品を国が認証する制度で、農産物や加工食品などがその対象です。
識名さんが育てる野菜は、農薬や化学肥料をまったく使わない有機農産物(JAS)の認定を受けています。高温多湿な気候で病害虫が発生しやすく、有機栽培がむずかしいとされる沖縄ではまだ数えるほどしかいない生産者のひとりです。
高校卒業後、農業大学校で農業を学んだという識名さん。
「観光農園もやってみたけど、父が有機栽培で作ったトマトはやっぱり食べておいしいんですよ。自然な流れで有機農産物を作るようになりましたね」と教えてくれました。
「なにより自分の子どもにおいしい野菜を食べさせたいですから」と、やさしい父親の顔も覗かせます。
識名さんが有機栽培をするうえで、一番に考えているのは土づくり。地元の養豚業者から譲り受ける豚糞、さしみ店からゴミとして出る魚のアラ、草刈りで出る雑草などを混ぜて堆肥化しています。循環型の堆肥に加え、畑の水はけを工夫し、根が育ちやすい環境を整えることも大切だそう。
世界的なSDGsへの取り組みもあって、今でこそ循環型農業は注目を浴びていますが、循環型の暮らしというのは、かつては世界中で当たり前に営まれていたはず。古くから豚食文化が根づいている沖縄には、敷地内に「ワーフール(豚小屋兼トイレ)」(写真)を備えた家があり、食物残さは豚のエサに、排泄物は畑の肥料として使われていたといいます。識名さんの取り組みはある意味、沖縄の農業への原点回帰と言えるかもしれませんね。
そんな識名農園の主力野菜はトマト。皮が薄く糖度が高いミニトマト「キャロル10」や小ぶりでうまみたっぷりの大玉トマト「りんか®️409」などを作っています。11月から4月にかけては主にミニトマトを県外へ出荷。本土では冬はハウス内を加温しないと色づかないことがあるそうですが、沖縄では無加温で栽培できるため、需要が高いそうです。
また、うるマルシェがオープンしてからは、ピーマンのほか、カラシナ、エンサイ、小松菜、サニーレタスなどの葉野菜の栽培もはじめ、うるマルシェの直売所でも年間を通して識名さんのさまざまな野菜を手に取ることができます。
「農業をやっていてよかったと思うのは、食べて喜んでもらえること」と識名さん。うるマルシェの農業体験イベントなどで、直接「おいしい!」という声を聞くと、地域の消費者とつながっていることを実感できるそう。「もっともっとおいしい野菜を作れるよう取り組んでいきたい」と目を輝かせます。
識名さんの将来の夢は、自分の畑を開放し、その時期に採れるもので野菜セットを作る収穫体験を始めること。体験のなかで興味を持った子どもが、将来のハルサー(畑人)になってくれたらうれしいと、識名さんは考えています。
新規就農を希望する人たちへ、自身の持つ知識やノウハウを提供することにもとても積極的な識名さん。うるマルシェもうるま市にハルサーがどんどん増えてほしいと応援しています!
- ゼロから始める畑作り-in識名農園-1
うるマルシェで島野菜の料理教室を開催してくれている野菜ソムリエプロの手登根節子さんも識名さんの野菜のファンのひとりです!
※この記事は2022年6月の取材にもとづいて作成されたものです。