うるマルシェの生産者さん13. 「うるまの海ぶた」生産者 池宮城畜産・池宮城宏さん(沖縄・うるま市西原)

//うるマルシェの生産者さん13. 「うるまの海ぶた」生産者 池宮城畜産・池宮城宏さん(沖縄・うるま市西原)

昔は芋・カズラで育てていた豚。その味が忘れられないとご高齢の方々がいうんです。

完全においしい肉作ります!僕が一番たのしみにしているんだから(笑)

沖縄県うるま市で肉豚や種豚を生産している畜産農家・池宮城宏さんは、戦後、沖縄の食糧難を救った「海から豚がやってきた」逸話と関わりがある方。豚コレラによる廃業の危機を乗り越え、現在はうるマルシェとともに、うるま市の特産品「黄金いも」を使った肉豚開発に挑んでいます。

今回、お邪魔したのはうるま市西原にある「池宮城畜産」。豚舎では西洋種から琉球在来のアグー豚まで、さまざまな品種・月齢の豚が飼育されています。もともと養豚業を営んでいた父親を手伝い、「小学校高学年ですでにベテランでしたよ」と笑う池宮城さん。25才で池宮城畜産を継いでからは、この道一筋35年以上、消費者向けの肉豚や生産者向けの種豚を生産してきました。

池宮城さんの父親が畜産農家になったのは戦後間もない頃のこと。第二次世界大戦終盤の沖縄戦で焼土と化した沖縄の食糧難を救ったといわれる、「海から豚がやってきた」逸話がきっかけでした。今も沖縄県民の間で語り継がれる、そのエピソードをご紹介してみましょう。

1945年の沖縄戦の惨状は県系2世米兵・比嘉太郎氏によって「島に人影なく、フール(民家の豚小屋)に豚なし」と伝えられたといいます。悲報を受けた世界各地の沖縄移民たちは、大量の救援物資を沖縄に送りました。なかでもハワイの嘉数亀助氏(布哇(ハワイ)連合沖縄救済会副会長)は、「豚なら食糧難を救うだけでなく、産業振興の足がかりにもなる」と考え、「生きた豚」を送ることを発案したそうです。

7人の豚付添人とともにアメリカを出港した550頭の白豚は、悪天候による再三の危機を乗り越え、1948年9月に現在のうるま市勝連にあるホワイトビーチ(写真)に到着しました。その後、沖縄県内で均等に分配され増え続けた豚は、4年後には10万頭を越えるまでに。これを機に沖縄の食糧事情は改善され、多くの人命が救われたと伝えられています。

 池宮城さんの父親は、その時沖縄に届いた豚の中からメス1頭を譲りうけたひとり。オス1頭を手に入れた仲間と協力して繁殖に努め、次第に生産量を増やして「池宮城畜産」を起しました。

戦後75年以上が経った今、「当時、豚を譲り受けた方々はすでに他界してしまい、養豚業を継いでいる方もいません」と池宮城さん。唯一、「海から豚がやってきた」話を身近に聞き、今も養豚業に携わっている存在が池宮城さんなのです。

二代目として、肉豚の肥育や種豚の繁殖ノウハウをさらに積みあげてきた池宮城さん。2019年には年間約1,400頭の豚を出荷し、種豚は沖縄本島北部や離島からも引き合いがあったといいます。また、お正月の振る舞い用にうるマルシェに豚を提供してくれるなど、地域を盛り上げる活動にも積極的に取り組んできました。

ところが2020年、順風満帆だった池宮城畜産にかつてないほどの危機が訪れます ー新型コロナウィルスの世界的感染拡大と時を同じくして、うるま市で豚コレラが猛威を奮ったのです。

「その時飼育していた豚はすべて殺処分となり、その後10ヶ月間は収入ゼロ。一時は廃業を考えましたが、やはり自分には養豚業しかないと、毎日を悶々と過ごしていました」と語る池宮城さん。

そんな池宮城さんの窮状を知ったうるマルシェは、兼ねてからうるま市らしさがあるおいしい豚肉を、地域の誰もが手に取りやすい価格で提供できないかと模索していたこともあり、市の特産品である「黄金いも」を使った肉豚を一緒に作ってくれないかと相談しました。

申し出をふたつ返事で引き受けてくれた池宮城さん。それに賛同したのは、宮城島(うるま市勝連)で黄金いもを作っている田中豊彦さんです。本来ならば廃棄してしまう商品にならない芋の提供を快諾してくれました。

さらに黄金いもの加工に手を貸してくれたのは、うるま市で障がい者の就労支援を行なっている「就労サポートセンター ありんこ」。こうして多くの人びとの思いが繋がり、ついにうるまの肉豚開発プロジェクトがスタートしたのです。

飼料に混ぜる黄金いもの量や期間を調整しながら、おいしい豚肉づくりは進行中!

池宮城さんは「昔は芋・カズラで豚を育てていたそうですが、その味が忘れられないとご高齢の方々がいうんです。その味を目指して、完全においしい肉作ります!」と意気込みはたっぷりに、試験飼育と試食を重ねています。

「海から豚がやってきた」おかげで、今も沖縄に根づいている「豚肉文化」と「ゆいまーる(助け合い)」の精神。それらをもっともっと地域に広げていきたいという思いで、「うるまの海ぶた」と名付けられた池宮城さんの豚はもうすぐお披露目予定! うるマルシェスタッフもワクワクドキドキが止まりません。

「完成したら田中さんと就労支援施設のみなさんに真っ先に食べてほしい」と目を輝かせる池宮城さんの豚、ぜひ楽しみにしていてくださいね!

●「うるまの海ぶた」生産者・池宮城宏さんの紹介動画

●黄金いも生産者・田中豊彦さんの紹介動画

※この記事は2022年2月の取材にもとづいて作成されたものです。

2022-02-11T18:27:31+00:00