野菜づくりは土づくりが命。10年かけた土作りから、未来をつくる野菜を育む。
うるま市勝連地区で農薬を一切使わないエコファーマーとして農業に勤しんでいる、兼城義信さん。
畑を訪れるとすぐに「まず、そこを歩いてごらん」と、土作り最中の畑の上を率先して引き連れる。地面には卵の殻や、もう食すことができなくなった野菜などが堆肥として散らばっている。
その後に「今度はこっち」と歩いた、畑の土。
先ほどの場所に比べて、一足一足が土の中へ埋もれていくような感覚。ふんわりと足を包み込むような、柔らかな土壌だ。
「土が固まりになってるわけ。団粒(だんりゅう)っていうのね。要するにこの下にはミミズがいて、土を耕してくれてるわけ。」
適度な空気を含んだ畑は、歩くとふかふかとしていて、柔らかい。だから水はけも良いし、適度な保水力もあるのだという。
固まった土地に、バガスや海藻、米ぬか、EMなどを加え、土を発酵させることを繰り返し、長い年月を重ねていくことでようやく有機栽培に適した土壌となる。
「ここまでの土に育つまでに最低でも7年。だから有機栽培には勇気がいるわけさ〜」と笑顔で話す兼城さん。
有機栽培で育まれた野菜は、化学肥料で育てられたものよりも、自然の甘みが強いという。くわえて路地栽培のものはハウス栽培に比べ栄養価も高い。
「違いがわかるのは子どもたちだね。民泊に来た子どもたちは、トマト嫌いでもきゅうり嫌いでも、この畑のものは食べられるっていうよ」と笑顔を見せる。兼城さんが育てているのは、インゲンやゴーヤー、玉ねぎ、トマトに加え、青梗菜やサニーレタスなどの葉野菜も。有機で育てているから、当然虫もつく。雑草もどんどん生える。それでも有機で育んだ野菜の安心・安全は、どんな手間暇をかけても変えられないものだという。
「農薬や化学肥料は戦後からのもの。その昔、江戸時代だって室町時代だって、みんな有機で野菜をつくってきたんだ。だから精神異常も少なかったと思うよ。今の時代、いろんな問題が起きるのは、やっぱり食べ物にも一因があるんじゃないかね。だから、僕らは地球に優しく、自然に沿った農業をやるんだ。」
そんな兼城さんの話を聞いていると、農家は野菜をつくることがゴールではないと教えられたような気がする。
「ぼくらの仕事は命をつないでいく産業」そう話す兼城さんは、50年後も100年後も、わたしたちが安心できる「食」をいただき、命をつないでいくための未来を見ている。